
2026.04.15 時点の投稿
福岡の不動産に、どのような価値を加えていくのか――九州レップ株式会社 代表取締役・白砂光規氏に聞く
- ファンド・コラム
福岡の不動産市場で、仲介、流動化、賃貸管理、そして開発へと事業領域を広げてきた九州レップ株式会社。その歩みを率いてきたのが、金融と不動産の両面に精通する白砂光規氏です。今回は、九州レップの沿革や白砂氏のキャリア、そして近年の取り組みを通じて見えてくる価値観について伺いました。

まずは、九州レップ株式会社の歩みと、白砂さんご自身のキャリアから教えてください。
九州レップは2010年5月に設立した会社で、不動産流動化事業、不動産仲介業務、不動産賃貸管理業務を中心に取り組んでいます。本社は福岡市中央区渡辺通にあり、東京にも拠点を構えています。地域に根差しながらも、福岡を含む九州の不動産を広い視野で見ていくことを大切にしてきました。
私自身は、1997年に三井信託銀行(現:三井住友信託銀行)に入社し、名古屋支店や不動産営業部を経て、2002年にGEリアル・エステートへ移りました。本社と福岡支店で不動産投資や売却の仕事に携わり、その後2010年に九州レップを立ち上げました。さらに2018年には九州ディベロップメント株式会社を設立し、不動産開発やバリューアップ、コンサルティングにも取り組んでいます。振り返ると、金融の側から不動産を見た経験と、現場で価値をつくる経験の両方が、今の経営の土台になっていると思います。
金融と不動産、両方の経験を持つ白砂さんが、仕事の中で一貫して大切にしていることは何でしょうか。
金融の世界で学んだのは、物件を感覚ではなく、収益性やリスク、流動性といった観点から冷静に見ることの大切さです。一方で、不動産の現場に入ると、数字だけでは測れない立地の特性や、企画・運営によって価値が大きく変わることも実感します。
だからこそ私が一貫して大切にしているのは、投資家目線の合理性と、現場で価値をつくる視点の両方を持つことです。目先の収益だけではなく、その不動産にどんな価値を加えられるのか、その価値が将来まで持続するのかを考えるようにしています。
そのうえで意識しているのが、「既存の常識にとらわれずに新しい要素をどんどん採り入れていこう」という姿勢です。不動産は歴史のある業界ですが、従来の延長線上だけでは差別化しにくいですし、将来の社会や利用者の変化にも十分には応えられません。だからこそ、固定観念にとらわれず、新しい価値をどう実装していくかを常に考えています。
もう一つ大切にしているのは、10年後、20年後を見越して考えることです。目の前の収益性はもちろん重要ですが、その不動産が将来どう使われるのか、どんな設備や考え方が求められるのかまで視野に入れておくことで、今やるべき投資や準備も変わってきます。不動産は完成して終わりではなく、その先の使われ方まで含めて価値が決まるものだと考えています。
その考え方が具体的に表れたプロジェクトとして、KD東比恵ではどのようなことを意識されたのでしょうか。

KD東比恵
KD東比恵は、福岡市博多区東比恵で進めた新築オフィスビルのプロジェクトです。ここでは、特に持続可能な開発と環境性能を重視しました。現時点で5区画分のEV充電に対応しつつ、将来的には最大18区画まで増設できるよう、先行配管やスマート分電盤も準備しています。これは「今こうだからこうする」という発想ではなく、この先の社会や利用環境の変化を見据えた設計です。
また、新しい設備を入れること自体が目的ではありません。光熱費の抑制やデマンド制御、不動産純収益の確保といった合理性も含めて成立することが大切です。新しい要素を取り入れるときほど、実務としてきちんと回るか、収益や運営の面でも納得できるかを考える必要があります。先進性と事業性、その両方を両立させることを意識しました。
一方で、博多の宿 徒然庵では、オフィス開発とは異なる発想も感じます。どんな価値を目指したのでしょうか。

博多の宿 徒然庵
徒然庵では、単に宿泊機能をつくるのではなく、「どんな体験を持ち帰っていただくか」を強く意識しました。天然木、檜風呂、坪庭、伝統工芸といった和の意匠に徹底的にこだわりながら、一方でICT設備による無人運営も導入しています。伝統的な日本らしさと、現代的な利便性を両立させることで、単なる宿泊施設ではない価値を目指しました。
私自身、不動産は建物だけでは完結しないと思っています。ハードを整えるだけではなく、宿名やロゴ、客室名、公式サイトまで含めて、どういう世界観をつくるかが大切です。徒然庵は、建物というハードと、ブランドや体験というソフトを一体で設計したプロジェクトでした。そうした積み重ねが、結果としてその不動産ならではの価値につながっていくのだと思います。
こうした取り組みを重ねる中で、福岡の不動産市場を今どのように見ていますか。
福岡には大きな可能性がありますし、実際に県外や海外からの関心も高まってきました。ただ、私は市場を楽観的に見ているわけではありません。さきほどお話しした通り、問い合わせが増える一方で、福岡には投資家の需要を十分に満たすほど物件が多いわけではない。資金流入が強まる局面ほど、供給や価格の水準を冷静に見ていく必要があります。
だからこそ、不動産会社としては、単に勢いに乗るのではなく、本当に価値を持つ不動産をどう見極め、どう育てていくかが問われると思っています。九州レップとしても、仲介や流動化、管理にとどまらず、必要であれば開発や価値創出にも踏み込んでいく.その姿勢をこれからも大切にしていきたいですね。
最後に、投資家の皆さまに伝えたいこと、そして今回のような発信機会への思いをお聞かせください。
投資家の皆さまには、九州レップを単に不動産を扱う会社としてではなく、地域の不動産にどう価値を加えていくかを考え続けてきた会社として見ていただけたらうれしいです。私はこれまで、金融の視点と現場の視点の両方を持ちながら、不動産を長い時間軸で見てきました。だからこそ、目先だけでなく、その先にどんな価値が残るのかまで含めて考えたいと思っています。
また、こうして会社の歩みや考え方を丁寧に伝える機会をいただけるのは、本当にありがたいことです。資金面の話だけではなく、企業の中身や経営者の考え方まで含めて知っていただけることは、長い目で見た信頼につながると思っています。その意味でも、こうした機会を設けていただいたバンカーズさんには感謝しています。
九州レップの歩みをたどると、白砂氏が一貫して見てきたのは、単なる取引としての不動産ではなく、そこにどんな価値を加えられるかという点でした。仲介、流動化、管理、開発、そして体験設計へ。領域は広がっていても、その根底にあるのは「既存の常識にとらわれずに新しい要素を採り入れること」と、「10年後、20年後を見越して考えること」という姿勢でした。
白砂 光規氏プロフィール
白砂 光規(しらすな・みつのり)
九州レップ株式会社代表取締役。1997年に三井信託銀行(現・三井住友信託銀行)に入社し、2002年にGEリアル・エステートへ。金融と不動産投資の現場で培った知見をもとに、2010年に九州レップを設立。2018年には九州ディベロップメント株式会社を立ち上げ、不動産仲介・流動化・賃貸管理に加え、開発やバリューアップ、宿泊施設の企画にも取り組む。10年後、20年後を見据え、九州の不動産に新しい価値を加えることを志向している。
九州レップ社オフィシャルサイト






