2025.12.09 時点の投稿

【貸付先徹底解説】「南部メキシコマイクロファイナンス支援ファンド」シリーズの貸付先 Avanza社をご紹介!

  • Bankersの潮流

「南部メキシコマイクロファイナンス支援ファンド」シリーズの資金需要者である Avanza Sólido, S.A. de C.V., SOFOM, E.N.R.(以下、Avanza社)の取り組みについて、前回は同社の顧客である零細事業者のストーリーをご紹介いたしましたが<前回の記事はこちらをご参照ください>、今回は同社が社会的インパクトを生み出すために取り組んでいる非金融サービスと、2021年から認証を受けている国際認証「顧客保護認証」について、ご紹介いたします!

 

Avanza社について

Avanza社は、2011年にメキシコ南部のチアパス州に設立された金融事業者で、金融機関へのアクセスが限られる農村地域を中心にマイクロファイナンス事業を展開しています。同社は、CrediAvanza Grupal (グループローン:複数の借り手がグループを作りお互いを連帯保証する仕組みのマイクロファイナンスにおいて伝統的な融資)、CrediAvanza Individual (個人事業主支援ローン:他の借り手の連帯保証が不要な比較的信用力のある借り手向けの融資)、Mejora tu vivienda (リフォームローン:店舗の改装などの設備資金や住宅修繕資金向けの融資) といった金融商品を提供し、零細企業や個人事業主の資金ニーズに柔軟に対応することで、順調に事業を拡大してきました。また、2025年には、多様な資金ニーズに応えるため、CrediAvanza Agro(農業セクター向けローン:運転資金や機械設備投資を必要とする農業セクターの借り手向け融資)、CrediAvanza Climático(気候変動対策ローン:気候変動に対応するための設備資金の融資)といった金融商品の提供も開始しています。

現在では、メキシコの中でも特に貧困問題が深刻で金融インフラも不足している南東部の5つの州(チアパス州、ユカタン州、タバスコ州、ベラクルス州、カンペチェ州)に計22支店を構え、約5万6千人超の顧客にサービスを提供しています。そして、そのうちの4万人以上の女性起業家が、Avanza社を通じて初めての融資を受け、事業に投資し、家族の生活の質を向上する機会を得ています。

 

Avanza社が提供する非金融サービスについて

しかし、Avanza社のコミットメントは融資の提供にとどまりません。同社は、金融や経営に関する知識、健康と保健衛生、環境保護(持続可能性)、そして客観的データに基づいて自律的に意思決定する力が伴わなければ、金融サービスへのアクセス格差を解消することはできないと考えました。そこで、金融包摂やジェンダー平等、農村開発といった共通の課題に取り組む現地の行政機関、非営利団体や企業と連携し、①農村地域における健康と保健衛生の向上、②女性の経済的自立、③環境保護を三本柱とする非金融サービスを積極的に展開し、持続可能な社会の構築に貢献しています。

ここでは、Avanza社が協力機関とともに提供する非金融サービスを紹介いたします。

  1. 健康向上プログラム/Avanza tu salud
    Avanza社の顧客の8割は医療資源が十分とは言えないメキシコの農村地域に暮らしています。そこで、同社は、医療アクセス格差を縮小するため無料の巡回診療を定期的に実施、また、メキシコで広く使われているメッセージアプリWhatsAppを利用した健康情報の発信やスポーツイベントの開催などを通じて、これまで多くの地域住民の健康促進に貢献してきました。 
  2. 女性の経済的自立支援プログラム/Fortalecimiento Económico de la Mujer
    Avanza社は女性の経済的自立を促進するため、金融教育、デジタル教育、女性の経済力強化プログラムなど多岐にわたる研修プログラムを展開し、これまでに5万人以上の女性起業家に提供してきました。
     
  3. 環境保護プログラム/Avanza Verde
    Avanza社の顧客には、気候変動の影響を受けやすい小規模農家も含まれます。そこで、気候変動リスクと農村開発に知見のある国際的な企業と連携し、気候変動に関する意識向上キャンペーンやSDGs(持続可能な開発目標)の推進活動にも取り組んでいます。  
  4. 教育バスプログラム/Autobús ASOLI Educa
    近年、デジタル環境の格差が教育の機会格差につながるという問題が指摘され、この格差是正に向けた取り組みが世界各国で行われています。そして、Avanza社が事業展開するメキシコにおいては、農村部におけるテクノロジーへのアクセスは都市部と比べて有意に低いことが分かっています。そこで同社は、「学んで、起業して、成長しよう」を合言葉に、デジタルアクセスが限られている農村地域へiPadと衛星接続を備えた特注のバスで出向き、各種の研修プログラムを提供する新たな取り組みを始めました。これにより、起業家は、事業を営み家族と暮らすコミュニティを離れることなく、事業の成長や生活の質の向上に役立つ知識を学ぶ機会を得ています。 

 

以上、Avanza社が協力機関とともに提供する非金融サービスを紹介いたしました。

 

Cerise+SPTF顧客保護認証(Client Protection Certification)について

次に、Avanza社が2021年から認証を受けている国際認証「顧客保護認証」について、ご紹介いたします。

 

同社が展開する事業「マイクロファイナンス」とは、主に発展途上国の低所得者層など、一般的な銀行の融資を受けられない人々に対し、小口の融資などを提供することで、経済的自立を支援するサービスです。しかし、マイクロファイナンスの拡大に伴い、借り手が複数のマイクロファイナンス機関(MFI)から借り入れを重ね返済が困難になる、いわゆる多重債務の問題が発生しました。その背景には、借り手が自身の返済能力を超えて借り入れを繰り返してしまうことや、MFIが収益拡大のために過度な貸付を推奨したりするインセンティブが働いてしまう、といった要因があると考えられています。

 

そこで、金融機関が、低所得者層の借り手に公正な金融サービスを提供していることを証明するための制度が作られました。「責任ある金融」を推進する国際的な非営利団体「Cerise」および「SPTF(Social Performance Task Force)」 が連携し、8つの評価軸からなる顧客保護原則(Client Protection Standards)[i]を策定、さらに、両機関に認定を受けた独立した認証機関が客観的に評価・認証する仕組みが構築されたのです。

 

そして、Avanza社は、初めて同認証を取得した2021年に続いて、2023年も最高位の「Gold」レベルの認証を受けています。金融包摂と持続可能な社会の実現に向けた同社の地道で誠実な取り組みが、国際的にも高く評価されていると言えるでしょう。

 
[i] 顧客保護認証の評価軸は以下の8つ。①適切な商品設計と提供:金融機関の製品、サービス、およびそれらの提供経路が顧客の利益となる。②過剰債務の防止:金融機関は顧客を過剰な債務に陥らせない。③透明性:金融機関は、顧客の意思決定を支援するために、適時に明確な情報を提供する。④責任ある価格設定:金融機関は、責任ある方法で公正な価格を設定する。⑤公正かつ敬意を持った接客:金融機関は、顧客に対する公正かつ敬意を持った対応を徹底する。⑥顧客データのプライバシー:金融機関は、顧客データを保護し、顧客のデータに関する権利について情報を提供する。⑦苦情解決の仕組み:金融機関は、顧客からの苦情を受け付け、解決するための効果的な仕組みを設ける。⑧ガバナンスと人事:取締役会および執行役員は顧客保護にコミットしており、人事システムがその実現を後押ししている。

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