2026.04.30 時点の投稿

売上200億円規模に到達しても、仕事の本質は変わらない――株式会社ブッシュクロフィード・萩原達弥氏インタビュー第二弾

  • ファンド・コラム

前回のインタビューでは、株式会社ブッシュクロフィードが手がける都心商業不動産への投資方針や、情報収集力を軸にした事業運営、そして「人に喜んでもらうこと」を大切にする経営姿勢について、萩原達弥氏に話を聞いた。第二弾となる今回は、事業規模が大きく拡大するなかで、何が変わり、何が変わっていないのか。2026年1月決算で売上200億円規模に達した現在地と、その数字が見えてきたなかでの組織づくりへの考えをあらためて聞いた。

 

 

売上が大きく伸びるなかで、仕事への向き合い方に変化はありましたか?

2026年1月決算では、売上200億円規模に達しました。2024年1月期売上44億円、2025年1月期売上109億円でしたから、数字だけ見ると、会社としてかなり大きくなったように見えるかもしれません。ただ、私自身の感覚としては、やっていることは今までとまったく変わっていません。物件をきちんと見て、その価値をどう高めるかを考えて、出口までしっかり描く。その基本を淡々と積み重ねているだけです。

売上というのは、あくまで結果として表れる数字です。もちろん経営者として数字は見ますし、規模が拡大していること自体はありがたいことだと思っています。ただ、売上が増えたからといって、仕事の本質まで変わるわけではありません。数字が大きくなったことに引っ張られて、判断の軸までぶれてしまったら意味がない。私にとっては、200億円という数字も一つの通過点でしかなくて、日々やるべきことをきちんとやるという感覚のほうがずっと大きいです。

それに、ここまで会社が大きくなってきたのは、私ひとりの力ではもちろんありません。日々現場を支えてくれている従業員はもちろん、いつも支えてくれている家族、設計会社や建設会社の皆さん、仲介会社の方々、そして銀行やバンカーズさんをはじめとする取引先の皆さまの力があってこそ、今のブッシュクロフィードがあります。そうした多くの方々に支えていただいた結果として、会社の規模も少しずつ大きくなってきたのだと思っています。

前回もお話しした通り、当社は都心の商業不動産に特化し、そのなかで濃い情報ネットワークを築いてきました。規模が大きくなっても、この仕事は結局、最後は現場感覚と判断の積み重ねです。だからこそ、会社の数字がどう伸びるか以上に、目の前の一件一件にどう向き合うかを大切にしています。

一つの案件も、社内だけで完結するものではありません。設計、建築、仲介、金融など、いろいろな立場の方が関わって初めて形になります。だから私は、数字の伸びを自分たちだけの成果だとは思っていませんし、むしろ周囲への感謝を忘れずに、一件一件を誠実に積み重ねていくことが、結果として次の成長につながるのだと思っています。

 

 

 

売上が伸びるなかで、組織づくりはどのように考えていますか?

売上が増えているからといって、単純に人をたくさん増やせばいいとは考えていません。規模が大きくなったときにやりがちなのが、数字に合わせて一気に採用を広げることですが、私はそこには慎重です。人が増えれば、それだけ組織の密度や文化の共有が難しくなりますし、育成が追いつかない状態で採ることは、本人にとっても会社にとってもいい結果にならないことが多いと思っています。

ですから、採用については量を追うのではなく、必要な範囲を見極めながら進めています。とくに増やしてきたのは新卒採用の部分で、会社全体を膨らませてきたわけではありません。2026年4月1日にも新入社員12名が入座しましたが、大切なのは人数そのものではなく、その一人ひとりをしっかり育てることです。会社の考え方や仕事の進め方を理解した人材を、時間をかけて育成していくことのほうが、長い目で見て大事だと考えています。

そもそも、売上が伸びたのは単純に人を増やしたからではありません。むしろ私は、一人ひとりのモチベーションが自然に高まり、その積み重ねが業績につながってきたのだと思っています。人数の多さで数字をつくるというより、社員が気持ちよく働ける状態を整えたことで、結果として会社全体の力が上がってきた、という感覚のほうが近いです。

 

新卒社員を迎え、育成体制を整えるなかで、本社移転にはどのような意味がありましたか?

2026年3月22日に、本店を恵比寿ガーデンプレイスタワー16階から21階へ移転したのも、単純に全体の人員が大幅に増えたから、という話ではありません。4月1日に新入社員12名を迎えるタイミングも見据えながら、これから育てていく組織として、コミュニケーションの取りやすさや働く環境をあらためて整える必要があった、という意味合いが大きいです。席数を増やせば済む話ではなく、社員が気持ちよく働けて、自然にコミュニケーションが生まれる空間にしたいと考えました。

実際、会社が成長するほど、現場で働く一人ひとりの状態がより重要になります。社員が安心して働ける環境があってこそ、仕事の質も保てるし、組織としての一体感も育ちます。オフィスは単なる器ではなく、会社の空気をつくる場所です。だから、働く場所への投資は惜しみたくない。そこは、今後も変わらない考え方だと思います。

人が増えたから売上が伸びる、という順番ではなく、社員が前向きに働ける環境をつくってきたからこそ、組織の力が高まり、結果として数字にも表れてきた。私はそう考えています。だから、3月22日の本店移転も、4月1日に新入社員12名を迎えたことも、単に規模拡大に合わせた対応ではなく、社員の力をさらに引き出すための土台づくりの一つなのです。

 

 

従業員の働く環境について、いま特に大切にしていることは何ですか?

従業員を大切にするという姿勢は、会社が大きくなっても変わりません。むしろ、新卒を迎え入れて組織の将来を考えるようになった今のほうが、以前よりも強く意識しているかもしれません。会社は最終的には人でできていますから、社員が安心して働ける環境づくりには、これからもきちんと投資していきたいと考えています。

その一つとして、幼児を持つパパママ社員向けに、社内に託児スペースをつくりました。しかも、ただ場所を用意するだけではなく、保育士が常駐する体制にしています。育児と仕事の両立は、本人の努力だけに委ねるべきものではないと思っています。優秀な人が、ライフステージの変化を理由にキャリアをあきらめなくていいようにする。それは会社にとっても大きな意味がありますし、長く働いてもらうための土台にもなるはずです。

私は、福利厚生を「会社のアピール材料」として考えているわけではありません。そうではなくて、働く人が無理を抱え込まず、自分の持っている力をきちんと発揮できる状態をつくることが大事だと思っています。安心して働ける環境があってこそ、仕事にも集中できるし、結果として会社の力にもなる。その順番は間違えたくないですね。

 

 

規模の拡大を経て、これからどんな会社にしていきたいですか?

売上規模が大きくなっても、会社として目指したいことはとてもシンプルです。いい仕事をして、社会に価値を残して、その過程で社員にもきちんと報いること。その積み重ねを、より安定的に、より強い組織で実現していきたいと思っています。

会社が成長するほど、外からは数字のインパクトで見られやすくなります。でも、本当に大事なのは、その中身だと思うのです。どんな仕事をしているのか、どんな判断基準を持っているのか、どんな環境で社員が働いているのか。そこがしっかりしていなければ、数字だけが大きくなっても長くは続きません。

だから私は、これからも規模の拡大そのものを追うのではなく、仕事の質と組織の質をきちんと高めていきたいと考えています。売上200億円も、その先にある数字も、すべては結果にすぎません。そもそも不動産業は、相場や金融環境の波を強く受ける事業ですから、大企業でもない限り、常に売上だけを追い求める経営のほうが、むしろ危ういと考えています。相場によっては、無理に案件を積み上げて数字をつくるよりも、あえて売上を落としてでも慎重に構える判断が必要な場面もあります。だからこそ、必要以上に採用を広げるのではなく、迎え入れた人材をしっかり育てること。そして、社員が安心して働ける環境を整えながら、同じ方向を向いて進んでいける会社であること。それが、これから先も変わらず大切にしていきたいことです。

 


 

規模が大きくなっても、やるべきことは変わらない。萩原達弥氏の言葉から伝わってきたのは、そんな静かな自信だった。売上200億円という数字の大きさ以上に印象に残るのは、働く人へのまなざしと、仕事の本質を見失わない姿勢である。成長と組織づくりを両立させながら、ブッシュクロフィードは次のステージへ進もうとしている。

 

株式会社ブッシュクロフィード:萩原達弥

1978年埼玉県生まれ。上場不動産会社数社での勤務を経て、2010年に株式会社ブッシュクロフィードを設立。代表取締役に就任。物件仕入れ、収支管理、商品化、出口戦略の立案を自ら担当し、住宅・商業・宿泊施設・駐車場など、幅広い不動産の開発・リノベーションを手掛ける。長年の経験と建築士の資格を活かし、物件の価値を最大化させることで、高い商品力を誇る。

 

 

ブッシュクロフィード社オフィシャルサイト

https://bush-clofied.co.jp/

 

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